【拡張について】
本問はいわゆる「階乗の一般化」として知られるガンマ関数そのものであり、高等学校では学習しない、より高度な数学的背景が隠されています。
階乗といえば、例えば 3!=3 × 2 × 1=6 , 5!=5 × 4 × 3 × 2 × 1=120 など
のことですが、これは自然数にだけ定義がされていて、例えば0!や は定義されていません。
ガンマ関数はこのような0!や の値を教えてくれる「拡張された」階乗の定義であるといえます。
数学は物事を「拡張」していく学問であり、大昔は1,2,3,...といった自然数のみであった数も、今では負の数、無理数( や円周率 p )、虚数( 2 乗して負になる )などへと拡張されています。
他にも小学校から中学校にかけて学習する「比例」と「 1 次関数」についても同様です。1つ 10 円のお菓子は2つ買えば 20 円で3つ買えば 30 円のように、お菓子の数個と金額 円の間に y=10x
などという関係を小学校では見いだします。
そして中学校では、「ただしお菓子を入れる袋の値段は5円です」等という条件をつけて、合計金額をy=10x+5と計算します。これは比例から 1 次関数への拡張です。
ではなぜ数学では物事の拡張を考えるのでしょうか?
それは拡張することで、限定的にしか成立しなかった余分な性質をそぎ落とし、より普遍的に成立する物事の本質を理解するためにあると考えています。 y=10x という比例のグラフはいつでも原点を通るということを学びますが、実はそれは本質的なことではありません。
y=10x+5 を学べば、 原点を通るという性質は実は限定的な余分な性質にすぎなかったということが分かります。
そうすれば、「傾きの異なる 2 本の直線は必ず交点を持つ」というような、より
本質的な性質を理解することができますし、これをより拡張すれば「 次方程式は 個の解を持つ」という普遍的な代数学の基本定理になります。
授業ではここまで生徒には伝えませんが、このような姿勢で本問の解説をおこないたいと思います。